カチカチカチ。今日はやけに時計の秒針が五月蝿い。恐らくそれは、今日が12月31日
だからだ。刻一刻と迫る新年まで残り15分。家族はリビングで紅白歌合戦を見終わる
頃だろうか。



「何か、お腹空いたなぁ・・・」




さっき蕎麦食べたばっかりなのに、と思いながらお腹を摩る。でもこれは多分、食べ物
の欲しさからではないのだ。今年、いろいろあり過ぎるくらいだったけど、今になって物
足りない。



「・・・ブン、太」



不意に自分が呟いた言葉に気付く。今年私が手に入れられたものの中で一番大切な
ものだ。その呟いた言葉から広がる想いは何故か悲しみがあって、熱を帯びていた。



「会い、たい な...」



私がそう描いた瞬間、お気に入りの着歌が部屋に響く。もしかして、と思い携帯のディ
スプレイを急いで見て、受話器のボタンを押す。



「もしもしっ?」

『あ、もしもし?』

「うん、どしたの?」

『いや、別に用事って訳じゃねぇんだけど...』



少し沈黙があり、静かに温かい空間が流れた。私はそれに心地よさを思いながら、目
を閉じる。そして、大好きな人の声が耳元に篭った。



『今、雪降ってるぜぃ』

「本当っ?積もってるの?」

『んーちょっとな。星もすげぇ綺麗』

「へぇ・・・私も見よっかなっ」



座っていたベッドから立ち、窓の方へ行く。カーテンをゆっくり開けると、ひんやりとした
空気が私を出迎えて待っていて。そこは、神奈川だと思えない程の満点の星と粉雪が
散っていた。



「わぁ・・・」

『な、すげぇだろぃ?』

「・・・っ」

・・・?』



こんなに外は綺麗なのに、ブン太の声は携帯が全てだ。近いようでこの微妙な距離を
掴めずにいる。冷たい窓にお凸を合わせながら、息を殺して涙を堪える。



『窓越しじゃなくて、外で見た方がもっと綺麗だぜぃ?』

「そ、と?」

『そう、外。だって台無しだろぃ?せっかくの・・・なぁ』



携帯から流れていた声が途切れ、ツーツーと耳に寂しく木霊した。私はブン太が何故
切ったのか、残した言葉が何だったのかよく分からなかった。確かに窓越しじゃ少しぼ
やけてしまうけど、それ程変わらない。でも、ブン太の言ったことだから、窓を空けて夜
空を覗いて見ようと思い、窓の鍵を開けた。



「寒っ」



僅かに開かれた窓の隙間からは髪を宙に靡かせる程の風と、頬に冷たいモノが触れ
る。負けるもんかと窓を開け、視界が広がったとき、目の前の風景に違和感を感じた。
そりゃあ雪が降ってるわけだから、雪景色が広がってるんだけど、でも何か違う。視界
の端に揺らぐ赤い・・・髪?



「まさか、ブン太・・・?」



その言葉を発したと同時に私は開けっ広げた窓を置いて、玄関まで駆け下りた。どうし
よう・・・無茶苦茶 嬉しい。そして、玄関で一つ息を吐き、ゆっくりとドアを開ける。



「遅いぜぃ?」

「・・・アホ」

「素直に喜べっての」



何が「遅いぜぃ?」だ。こんなに喜ばせておいて、素直に喜べ?私はこんなに、こんな
にも心から湧き上がる感を抑えられないでいるのに。だからブン太に駆けよって、今の
自分の精一杯をあげよう。



「ブン太っ」

「んー?」



今の気持ちを表せない代わりに、思いきりの温かさを。



「今まで、ありがとう!」







ゴーン...







抱きついてそう叫んだ瞬間、近くの神社で除夜の鐘が鳴った。一つ一つの家庭からの
沸き上がる歓声をも窓から漏れて来て。ブン太は抱きつく寸前に目を開いたが、何か
に気付いたのか向かい合う今はそれを忘れさせる程の頬笑みだ。



「んで、それと?」

「それと・・・今年も、これからも、よろしくお願いしますっ」

「当然だろぃ」


それから零れた笑みは今までで一番で。お互いを見合い、二人の頬は寒さの所為か、
それとも擽ったいその気持ちの所為なのか、それが分かるのは私と彼だけだ。

中学3年の秋。部活がもう終わって、空っぽだったお互いを埋め尽くせたのは、去年の
あの出来事からだったよね。私はこのことを一生忘れないと思う。まるで魔法のような
キミからのサプライズを。最後にもう一つ・・・本当に、ありがとう。






























        (大好きって、何回も言うから・・・)   (これからもこの温もりを下さい。)

































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 明けましておめでとうございます!

 年が明けてから結構経ちますがww
 今年の初夢だ〜(ある意味)

 ブンちゃんからスタート致しましたぁ
 こんなサプライズ・・・在り来たりやッ;
 新年早々、申ち訳ない...←

 ブログにも書きましたが、
 昨年はありがとうございました♪
 今年も頑張って小説書くんで!!
 宜しくお願いします^^




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