俺には好きな奴がおる。その子は俺の幼馴染で、小学生のころはよぅ遊んでた。
でも、中学生になったある日から、あんま目も合わせんくなったし、名前も「蔵」
から「白石君」に変わっていたんや。初めはそれを不満に思ったけど、今ではそ
の理由が分かっとるから何も言わんかった。


3年生になり、俺はと同じクラスになった。今までは同じクラスにならず、平
和な中学校生活を送っていたが、同じクラスとなると少し不便だ。



「(アカン、今までのバランスが一気に崩れそうや。)」



そしてある日の帰り、降りた駅でと会った。というより・・・





ドンッ





「ぁ、すんまへん」

「いえ、此方こそ」



とまぁ、こんな感じでぶつかってしもた相手がやっただけやけど。最初は気
付かず敬語を使ったが、ぶつかった相手を見て思わず「あ、」と言ってしま
った。周りに四天宝寺中の奴がいるかもしれんのに、名前を言ってしもた。
に迷惑が掛かる、そう思ても体が言う事を利かずにいた。



「本当、ごめんなさいっ」



はそう言うと走って行ってしまった。俺はその方向を見て、「遠いな・・・」そ
う呟いた。先程、体が言う事を利かんかったんは、が泣きそうな顔で俺を
見ていたから。俺はその表情を思い出し、少し下を向いた。



「?」



ふと気付いたんは落し物の定期。誰のかは大体分かっていたが、さて。コレを
如何しようかなんて俺は何一つ思いつかない。とりあえずソレを拾い、グッと握
り締めた。の文字の隣には、もう俺に向けられることはないであろう
頬笑むがいた。



「何してんのやろ」



自分に向けた言葉だった。でもその答えは自分の中では出ていた様で、気付
いたらの走って行った方向へと足が動いていた。その方向は俺の家でも
あり、隣のの家の方向でもあった。



「っはぁ...」



しばらく走り続けると道端でウロウロしているを発見し、定期を探している
んやと確信した。もう夕日は傾き切っていて、辺りはあまり見えない。俺はもう
一度、定期を握り締め見つめた。





「どないしたん?」



――知らない振りをして、近付き



「定期を落としてしもて...」



――気付いていない悠里に接近し、



「お嬢さん、落し物はコレやないの?」



――振り向かせ、



「んっ」



――オトシモノを掬い上げる。





目の前には赤面で固まる悠里がいて。俺はそんな悠里を長い時間見つめた感
覚で、やはり無くてはならない言葉を口にする。



「好きや」

「っ・・・」

「ずっとずっと、」



久しぶりに目の前で見たは少し大人びているように見えた。そして俺は、
ちゃんと目の前にいるっていう嬉しさから我慢できなくて、有無を問わず抱き
締めた。きつくキツク優しく。



「避けんでや・・・っ」



俺の本音は気が抜けていて、今にも崩れそうな乾いた叫びやった。もうこの手
を離したくない。もうここから離れて欲しくない。本当に赤い糸があるならば、俺
を一生解けることのない糸で結んで欲しい。そんな願いが幾つも浮かん
で、全て叶うよう星に願いたいくらいに。



「蔵っ」



やっと聞けた俺を呼ぶ声は酷く水っぽくて、俺と正反対やった。その声が聞こえ
た後、抱き締めていた腕に腕が重なり、俺の腕は熱を残して僅かに力を失った。



「私ね、ずっと我慢したんだよっ?」



水分を含んだ声は僅かだが力強く、俺の心中を一瞬にして圧倒させ熱を持つ。



「蔵の傍にいたかった。でも辛くて、それを蔵が知ったら迷惑も
掛かるって思った、のにっ」

「せやな。俺の所為や・・・けど、」



抱き締めていたをゆっくりと離し、向かい合う。真剣な視線を交わし合い、
周りには風の音しか聞こえない。俺の答え、お前やったら分かっとるやろ?



「もう離さへん」



今の俺には余裕なんて言葉は当て嵌まる訳が無い。のに俺は頬笑んで馴染み
の深い表情にもう一度キスをした。は俺の言葉を聞くと、先程の大人びて
いた表情は消えて見慣れた笑顔を魅せ、こう耳元で囁いた。



「一生守って・・・くれるなら」



の鼻篭った声が耳に心地よく響き、何だかくすぐったかった。俺は
条件を「勿論やで?」と呑み、思わず笑いが零れた。その瞬間に忘れていた何
か懐かしいモノ達を、違う形で拾い上げられた気がした。



「俺の落しモノ、やっと拾ったで」



























Pickup you


   (ある日、脆い何かを落とした)  (思い出して、私を掬い上げて)
































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 んんーっ エクスタシー♪
 今回は私の大好きな蔵でした!
 ぃやもぅアレは最高ですよねww

 更新いつも遅くて本当スミマセン;
 頑張って品を増やしていきますっ^^




 091130